パンフルートは、フルートと同様ヴィブラートによって積極的に曲想を付けることができる楽器だと思います。
maestro Zamfir を始めとして多くのプロがヴィブラートをかけて叙情的に奏でる音色は素晴らしいものです。
パンフルートのヴィブラートの掛け方には大きく2通りあって、一つは楽器を動かす方法と、もう一つは息で掛ける方法です。
楽器を動かすのに、ほとんどのプロは高音側の手で楽器を動かしてヴィブラートをかけます。左側が高音なら左手ですね。
しかし、この方法だと低音域である右側の音のヴィブラートが掛けにくいので、その時は反対の右手で動かす人もいます。実際に何人かのプロもやっていますし、私も無意識にやっていました。(師匠に言われて気づいたんです😁)
もう一つは息で掛ける方法ですが、フルートはこの方法でしかヴィブラートが掛けられません。若い頃は横隔膜で掛けるよう指導されたし、そういうもんだと信じていましたが、画像診断や筋電計で検証したら横隔膜を動かしている人はいなかったそうです。まあ、横隔膜を動かすような気持ちで、ということでしょうか。私の場合は喉の奥の方が動いているようです。
パンフルート奏者は圧倒的に楽器を動かすヴィブラートを使う人が多いのですが、両方を使い分けるプロもいます。
楽器を動かすのと息で掛けるのは何が違うのでしょうか?
少し見にくいですが、灰色の波形の赤矢印をみてください。上は楽器を動かすヴィブラートで、下は息ヴィブラートです。真ん中のラの音を吹いた波形です。上の図では、動画だとそれぞれの山がヴィブラートに対応して左右に動く、つまり音程が変化しているのですが、動いた軌跡を重ねて記録してあるので山が少し左右に膨らんでいます(上の図の赤矢印)。下の図では、動画だと山が全体的に上下します。つまり、音量が変化しているのですが、軌跡を重ねた図では山が針みたい尖っていますね。
楽器を動かすヴィブラートは音程が揺れるのに対し、息ヴィブラートは音量が変化することが分かりました。さらに黄色の矢印で示す第2倍音が、上の図の方が振幅が高くなっており、音程ヴィブラートの方が第2倍音が音量が大きいようです。倍音は大きいほうがいいと思いますがどうでしょう。
さて、どちらがいいのか?個人的には音程ヴィブラートの方が好きな音色が出せるような気がしますが、息ヴィブラートも自然にやってるかもしれません。心情を吐露するような時に。
因みにヴィブラートの振幅が浅くて周期が短いヴィブラートをちりめんヴィブラートと言って、クラシックでは嫌う人が多いのでTPO大事です。
ヴィブラートを掛けないで素朴に吹くのも味わいのある演奏です。